ファストファッションの原価 - T シャツ 1 枚の原価 200 円、価格の内訳を分解する

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T シャツ 990 円の内訳 - 原価は約 200 円

ファストファッションブランドで 990 円で売られている T シャツ。その原価 (製造原価) は約 150〜250 円だ。

生地代: 約 60〜100 円。綿 100% の場合、T シャツ 1 枚に使う生地は約 200〜250g。綿の国際価格と生地への加工費を合わせて、1 枚あたり 60〜100 円。ポリエステル混紡ならさらに安い。

縫製費: 約 50〜80 円。バングラデシュやベトナムの縫製工場での人件費。T シャツ 1 枚の縫製にかかる時間は約 10〜15 分。現地の縫製工の時給は約 50〜100 円。

付属品 (タグ、ボタン、パッケージ): 約 10〜20 円。

輸送費・関税: 約 30〜50 円。コンテナ船での海上輸送、通関手続き、国内配送。大量輸送のスケールメリットで 1 枚あたりのコストは低い。

合計すると、製造原価は約 150〜250 円。990 円の販売価格に対する原価率は約 15〜25%。飲食店の原価率 30〜35% よりも低い。

残りの 790 円はどこに消えるのか

製造原価 200 円と販売価格 990 円の差額 790 円。この内訳を見てみよう。

ブランドの粗利 (卸値と原価の差): 約 200〜300 円。ファストファッションブランドは、製造原価の 2〜3 倍の卸値で小売部門 (自社店舗) に卸す。この差額がブランドの粗利だ。ここからデザイン費、品質管理費、本社の人件費が賄われる。

店舗運営費: 約 300〜400 円。テナント料 (売上の 10〜15%)、店舗スタッフの人件費、光熱費、内装維持費。都心の一等地に大型店舗を構えるファストファッションブランドは、テナント料だけで 1 枚あたり 100〜150 円のコストがかかる。

広告宣伝費: 約 50〜100 円。SNS 広告、インフルエンサーマーケティング、カタログ制作。

廃棄・値引きロス: 約 50〜100 円。売れ残った商品の値引き販売や廃棄のコスト。ファストファッションは大量生産・大量廃棄のビジネスモデルであり、売れ残りが出ることを前提に価格が組まれている。仕入れた数のうち何割が定価で売れるかはブランドや季節によって変わるため外からは確かめられないが、売れ残った分のコストは売れた商品の価格に転嫁されている。

990 円の T シャツ 1 枚で代金がどこへ向かうか - 本文の金額を上限値でそろえた内訳
店舗運営費300〜400 円40% ブランドの粗利200〜300 円30% 広告宣伝費50〜100 円10% 廃棄・値引きロス50〜100 円10% 生地代 (製造原価)60〜100 円10% 縫製費 (製造原価)50〜80 円8% 輸送費・関税 (製造原価)30〜50 円5% 付属品 (製造原価)10〜20 円2%

バーの幅は各項目の上限値を、最も大きい店舗運営費の 400 円を 100% として換算したもの。右端の比率は売価 990 円に対する割合 (同じく上限値)。上限値をすべて足すと 990 円を超えるため、実際の 1 枚ではどこかの項目が下限寄りになる。

原価率の低さは利益の大きさではない - 最大の費目は店舗運営費

原価率 15〜25% という数字だけを見ると、差額がそのままブランドの手元に残るように見える。内訳を並べるとそうはならない。前の節で最も大きい費目は店舗運営費の 300〜400 円で、製造原価の合計 150〜250 円を上回っている。

つまり、990 円の T シャツで最も大きな金額が向かっているのは、服そのものではなく売り場だ。都心の一等地に大型店舗を構える売り方を選んだ結果、テナント料だけで 1 枚あたり 100〜150 円が必要になる。この費用は服の品質には反映されないが、その場で手に取って試着できるという価値と引き換えになっている。

飲食店の原価構造と比べると違いがはっきりする。飲食店の原価率が 30〜35% と高いのは、その日に仕入れたものをその日に売る商売で、材料に払う金額の比重が大きいからだ。衣料品は原価率が低い代わりに、売り場と広告に払う金額の比重が大きい。原価率の低い業種ほど儲かっている、という読み方はできない。

買い手にとって意味があるのは、値札のうち服そのものに使われている部分がどれくらいかという視点だ。同じ 990 円でも、売り方を変えれば服に回せる金額は変わる。次の節で見るユニクロと SHEIN の価格差は、この配分の違いから生まれている。

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ユニクロと SHEIN の価格差 - 何が違うのか

同じ「ファストファッション」でも、ユニクロの T シャツ (990〜1,500 円) と SHEIN の T シャツ (300〜500 円) には大きな価格差がある。

品質の差。ユニクロは生地の品質管理に力を入れており、綿の品質、縫製の精度、洗濯耐久性が SHEIN より高い。生地代と縫製費に 1 枚あたり 50〜100 円の差がある。

在庫リスクの取り方。ユニクロは「計画生産」で、需要予測に基づいて生産量を決める。SHEIN は「テスト生産」で、少量を生産して売れ行きを見てから追加生産する。SHEIN の方が廃棄ロスが少なく、その分を価格に反映できる。

店舗コストの有無。SHEIN はオンライン専業で、実店舗を持たない。店舗運営費 (1 枚あたり 300〜400 円) がゼロ。これが価格差の最大の要因だ。

送料無料の経済学で解説したように、EC 専業は実店舗のコストを削減できる代わりに、物流コストが発生する。しかし、物流コストは店舗コストより大幅に安いため、EC 専業の方が低価格を実現しやすい。

同じ価格帯でも中身は違う - 買う前に見分けられる点

価格差の大きな部分が売り方の違いで説明できるということは、逆に言えば値札から服そのものの出来は読み取れないということだ。生地代と縫製費の差は 1 枚あたり 50〜100 円で、値札の差の方がずっと大きい。安い方が必ず粗いわけでも、高い方が必ず長持ちするわけでもない。

表示から分かること。組成表示を見れば、綿 100% かポリエステル混紡かは分かる。混紡は生地代が安くなる一方で、乾きやすさや形の保ちやすさでは有利になる場合もある。用途を決めてから選ぶ材料になる。

手に取って分かること。生地の厚みは、同じ T シャツでも 1 枚あたり 200〜250g という重さの差として現れる。薄い生地は透けやすく、洗濯を繰り返したときの型崩れも早い。縫い目の始末や、襟のリブが伸びきっていないかも、店頭なら数秒で確認できる。

ここで確認できるのは、原価のうち生地代と縫製費に相当する部分だけだ。それでも、洗濯耐久性の差が出るのはこの部分なので、長く着る予定の服では確認する価値がある。1 シーズンで着なくなる服なら、この確認は省いてよい。

服にかけるお金を最適化する方法

ファストファッションの原価構造を理解した上で、服にかけるお金を最適化する方法をまとめる。

「1 回あたりのコスト」で考える。990 円の T シャツを 10 回着れば 1 回 99 円。3,000 円の T シャツを 50 回着れば 1 回 60 円。安い服を頻繁に買い替えるより、やや高い服を長く着る方が「1 回あたりのコスト」は安くなることがある。

セール時期を狙う。セール時期の法則で解説したように、アパレルのセールは 1 月と 7 月が最大。シーズン終わりのセールで 50〜70% オフの商品を買えば、原価に近い価格で購入できる。

フリマアプリを活用する。フリマアプリの価格形成で解説したように、中古衣料品は定価の 30〜50% で取引される。ブランド品なら品質も十分だ。

定番アイテムはユニクロ、トレンドアイテムは SHEIN。長く着る定番 (白 T シャツ、デニム、ニット) は品質重視でユニクロ。1 シーズンで着なくなるトレンドアイテムは、低価格の SHEIN で十分。目的に応じた使い分けが最も合理的だ。

セールで原価に近づく価格 - 値引き分は誰が負担しているのか

シーズン終わりに 50〜70% オフまで下がると、価格は製造原価に物流や広告の費用を足した水準まで近づく。ここで気になるのは、その値引きの原資がどこから出ているのかだ。

答えは前の内訳に書いてある。廃棄・値引きロスの 50〜100 円が、最初から 990 円の中に含まれている。売れ残りが出ることを織り込んだ値付けなので、定価で買った人が、後から値引きされる分をあらかじめ負担している形になる。ファストファッションの定価は、全部が定価で売れる前提の価格ではない。

だからといって定価で買うのが損だという話ではない。サイズと色が揃っているうちに買えるのは定価の時期だけで、シーズン終わりまで待てば選べる範囲は確実に狭くなる。セール時期の法則で扱ったとおり、待つかどうかは値引き率ではなく「その時期まで待てるものか」で決まる。

分け方は単純だ。着る時期が決まっている服 (夏に着る T シャツ、式に着るシャツ) は待てない。定番で、今シーズンでなくてもよい服は待てる。前者を定価で買い、後者をセールで買うと決めておけば、値引き率を見て迷う時間はなくなる。フリマアプリの価格形成で扱った中古の相場も、この「待てるもの」の選択肢に入る。

よくある質問

990 円の T シャツの原価はいくらくらいですか?

製造原価は約 150〜250 円です。内訳は生地代が 60〜100 円、縫製費が 50〜80 円、タグやパッケージなどの付属品が 10〜20 円、輸送費・関税が 30〜50 円です。990 円に対する原価率は約 15〜25% で、飲食店の原価率 30〜35% より低い水準になります。

原価が 200 円なら、差額の 790 円はブランドの利益なのですか?

利益ではありません。差額の内訳で最も大きいのは店舗運営費の 300〜400 円で、製造原価の合計を上回ります。次にブランドの粗利 200〜300 円 (ここからデザイン費や本社の人件費が賄われます)、広告宣伝費 50〜100 円、廃棄・値引きロス 50〜100 円が続きます。原価率が低いことは、原価以外にかかる費用が大きいことの裏返しでもあります。

SHEIN がユニクロより安いのはなぜですか?

最大の理由は実店舗を持たないことです。1 枚あたり 300〜400 円かかる店舗運営費がかからないため、その分を価格に反映できます。加えて、少量を生産して売れ行きを見てから追加生産する方式のため廃棄ロスが小さくなります。生地代と縫製費の差は 1 枚あたり 50〜100 円で、値札の差ほど大きくはありません。

服にかけるお金を抑えるには、どこから手をつければよいですか?

まず「1 回あたりのコスト」で見ることをおすすめします。990 円の T シャツを 10 回着れば 1 回 99 円、3,000 円の T シャツを 50 回着れば 1 回 60 円で、長く着る前提なら高い方が安くなることもあります。そのうえで、着る時期が決まっている服は定価で買い、今シーズンでなくてもよい定番はセール (アパレルは 1 月と 7 月が最大) や中古を待つ、と決めておくと迷いが減ります。

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