コンビニの値引き戦略 - おにぎり 100 円セールの裏にある緻密な計算

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コンビニはなぜ「定価販売」が基本なのか

スーパーマーケットでは日常的に見かける値引きシールが、コンビニではほとんど見られない。この違いは、両者のビジネスモデルの根本的な差異に起因する。

スーパーの収益モデルは「薄利多売」だ。大量仕入れで単価を下げ、広い売場面積で多くの商品を陳列し、価格の安さで集客する。値引きは在庫処分の手段であると同時に、来店動機を作るマーケティングツールでもある。

一方、コンビニの収益モデルは「高利少売」だ。狭い売場面積に厳選された商品を並べ、24 時間営業の利便性に対してプレミアム価格を設定する。同じペットボトル飲料がスーパーより 30〜50 円高いのは、「いつでも、すぐに買える」という時間的価値の対価だ。

コンビニが値引きを避けるもう一つの理由は、フランチャイズ構造にある。コンビニの多くはフランチャイズ方式で運営されており、本部と加盟店の利益配分はロイヤリティ (売上総利益に対する一定割合) で決まる。値引きして売ると加盟店の粗利が減り、ロイヤリティの計算基盤が縮小する。本部にとって、加盟店が定価で販売する方が都合がよい構造になっている。 コンビニを試してみる →

おにぎり 100 円セールの経済学

コンビニが定価販売を基本としながらも、定期的に実施するのが「おにぎり 100 円セール」のような期間限定の値引きキャンペーンだ。通常 120〜180 円のおにぎりが一律 100 円になるこのセールには、緻密な計算が隠されている。

客数の増加効果。おにぎりはコンビニで最も購入頻度の高い商品カテゴリの一つだ。100 円セールを告知すると、普段はコンビニを素通りする層が「おにぎりが安いから寄ろう」と来店する。この追加来店が、セールの第一の目的だ。

ついで買いの誘発。おにぎりだけを買って帰る客は少ない。飲み物、サラダ、デザート。おにぎりを目当てに来店した客が、定価の商品を「ついで」に購入する。おにぎり 1 個の値引き額は 20〜80 円だが、ついで買いの客単価増加は数百円に達する。値引きの損失を、ついで買いの利益が大幅に上回る。

メーカーとの共同負担。おにぎり 100 円セールの値引き原資は、コンビニ本部だけが負担しているわけではない。おにぎりの製造メーカーや原材料の供給元が、販促費として値引き原資の一部を負担するケースがある。メーカーにとっても、セール期間中の出荷量増加は工場の稼働率向上につながるメリットがある。

見切り品シールの登場 - 食品ロス対策が変えたコンビニの常識

かつてコンビニでは、消費期限が近づいた商品は値引きせずに廃棄するのが常識だった。しかし 2019 年頃から、食品ロス削減の社会的要請を受けて、大手コンビニチェーンが相次いで見切り品の値引き販売を容認し始めた。

セブン-イレブンは 2019 年に、消費期限の近い弁当やおにぎりの購入者にポイントを還元する「エシカルプロジェクト」を開始した。直接的な値引きではなく、ポイント還元という形を取ったのは、「コンビニ = 定価」というブランドイメージを維持しつつ、実質的な値引きを実現するための工夫だ。

ファミリーマートやローソンも同様の取り組みを展開し、消費期限が近い商品に値引きシールを貼る店舗が増えている。農林水産省の推計によると、日本の食品ロスは年間約 472 万トン (2022 年度)。コンビニの食品廃棄はその一部だが、全国に約 5 万 6,000 店舗あるコンビニの取り組みは、社会全体のインパクトとして無視できない規模だ。

消費者にとっては、消費期限の近い商品を割安に購入できる機会が増えたことになる。夕方以降にコンビニを訪れると、弁当やサンドイッチに 20〜30% 引きのシールが貼られていることがある。すぐに食べるなら、品質に問題はない。

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PB 商品の原価構造 - なぜ NB より安いのか

コンビニの棚には、メーカーのブランド商品 (NB: ナショナルブランド) と並んで、コンビニ独自のブランド商品 (PB: プライベートブランド) が並んでいる。セブンプレミアム、ファミマル、ローソンセレクト。これらの PB 商品は、同等の NB 商品より 10〜30% 安い価格設定が一般的だ。

PB 商品が安い理由は、コスト構造の違いにある。NB 商品の価格には、メーカーの広告宣伝費、営業人件費、ブランド維持コストが含まれている。テレビ CM 1 本の制作・放映費は数千万円から数億円。この費用は最終的に商品価格に転嫁される。

PB 商品はこれらのコストを大幅に削減できる。コンビニ本部が商品企画を行い、製造はメーカーに委託する。広告は店頭の棚そのものが担い、テレビ CM は不要。パッケージデザインもシンプルにすることで、印刷コストも抑えられる。

興味深いのは、PB 商品の製造元が NB 商品と同じメーカーであるケースが多いことだ。同じ工場の同じ製造ラインで、ラベルだけを変えて生産される。品質はほぼ同等なのに、ブランド名が違うだけで価格が 2〜3 割変わる。消費者が「ブランド名」に対して支払っているプレミアムの大きさがわかる。

コンビニアプリのクーポン戦略

近年、コンビニ各社が力を入れているのがスマートフォンアプリを通じたクーポン配布だ。セブン-イレブンアプリ、ファミペイ、ローソンアプリ。いずれも会員登録すると、定期的にクーポンが配信される。

コンビニアプリのクーポンには、紙のクーポンにはない戦略的な意図がある。

購買データの取得。アプリ経由の購入は、「誰が、いつ、何を買ったか」が正確に記録される。このデータに基づいて、個人の購買傾向に合わせたクーポンを配信できる。コーヒーをよく買う人にはコーヒーの割引クーポン、スイーツ好きにはデザートのクーポン。パーソナライズされたクーポンは、一律配布のクーポンより利用率が高い。

来店頻度の向上。「今週限定」「本日限り」といった期限付きクーポンは、来店のきっかけを作る。クーポンがなければ来店しなかった日に足を運ばせることで、週あたりの来店回数を増やす効果がある。

コンビニのクーポンは、招待コードPayPay のキャンペーンと組み合わせることで、さらにお得になる。QR コード決済のポイント還元とコンビニアプリのクーポン割引を重ねれば、定価販売が基本のコンビニでも実質的な割引率を高められる。

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