給食の原価 - 1 食 250 円で栄養満点の食事が出せる理由

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給食費の内訳 - 保護者が払っているのは食材費だけ

中学校の給食費は月額 5,000 円前後、1 食あたりに換算すると約 250〜300 円だ。コンビニ弁当が 500〜600 円、外食なら 800 円以上かかることを考えると、驚くほど安い。

この安さの秘密は「保護者が払っているのは食材費だけ」という点にある。給食を作る調理員さんの人件費、調理場の建設費や光熱費、食器や調理器具の費用はすべて市区町村の税金でまかなわれている。つまり、給食費 250 円は純粋に食材の原価だけなのだ。

もし人件費や設備費も含めた「本当のコスト」を計算すると、1 食あたり 800〜1,000 円になるとも言われている。学校給食法 (第 11 条) は、調理施設や設備の費用と政令で定める運営経費を学校の設置者 (自治体など) の負担、それ以外を保護者の負担と定めている。保護者が給食費として払っているのは食材費などに限られ、給食にかかる費用の一部にすぎない。

中学生の昼食 1 食にかかるお金の比べ方
給食費 (食材費)300 円30% コンビニ弁当600 円60% 外食800 円80% 給食の本当のコスト1,000 円100%

帯の長さは 1 食 1,000 円を上限としたときの割合。金額はこの記事で挙げた目安の上側の値 (給食 250〜300 円・コンビニ弁当 500〜600 円・人件費や設備費まで含めた本当のコスト 800〜1,000 円) を使い、外食は「800 円以上」の下限値を使っている。

大量仕入れのパワー - 1,000 人分をまとめて買うと何が起きるか

給食の食材費が安いもう一つの理由は、大量仕入れだ。1 つの給食センターが 1 日に 3,000〜5,000 食を作ることも珍しくない。これだけの量をまとめて発注すると、食材の単価が大幅に下がる。

たとえば、にんじん 1 本をスーパーで買うと 50〜80 円だが、給食センターが農家から 500 kg 単位で仕入れると、1 本あたり 15〜20 円程度になる。鶏肉も、スーパーの小分けパックは 100g あたり 120 円前後だが、業務用の大量仕入れなら 100g あたり 60〜80 円だ。

この「まとめ買いで安くなる」仕組みは、まとめ買いの経済学で詳しく解説している。給食は、まとめ買いのメリットを最大限に活かした究極の例と言える。

給食センターの仕入れ値はスーパーの店頭価格の何割か
にんじん 1 本15〜20 円約 25% 鶏肉 100g60〜80 円約 67%

帯の長さはスーパーの店頭価格を 100% としたときの割合。この記事で挙げた目安の上側の値 (にんじん 1 本 = スーパー 80 円・給食 20 円 / 鶏肉 100g = スーパー 120 円・給食 80 円) から計算したもので、実際の仕入れ値は産地や時期で変わる。

栄養士の献立マジック - 限られた予算で栄養基準をクリアする技

学校給食には文部科学省が定めた「学校給食摂取基準」がある。1 食あたりのカロリー、たんぱく質、カルシウム、鉄分、ビタミンなどの目標値が細かく決められていて、栄養士はこの基準を満たす献立を毎日考えている。

予算内で栄養基準をクリアするために、栄養士が使うテクニックがいくつかある。まず「旬の食材を使う」こと。旬の野菜は出荷量が多いため価格が安く、しかも栄養価が高い。冬のほうれん草は夏のものよりビタミン C が 3 倍多いというデータもある。

次に「安い食材で高い栄養を取る」工夫だ。もやし (1 袋 30 円前後) はビタミン C と食物繊維が豊富。豆腐 (1 丁 40 円前後) はたんぱく質とカルシウムの優秀な供給源。卵 (1 個 20 円前後) はほぼ完全栄養食品だ。こうした「コスパの高い食材」を上手に組み合わせることで、250 円の予算でも栄養満点の食事が実現する。

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給食費が自治体で違うのはなぜか

「1 食 250〜300 円」は全国どこでも同じ金額ではない。給食費は市区町村ごとに決められていて、隣の市と比べてもはっきり差が出ることがある。理由は大きく 3 つある。

理由 1: 自治体の補助の範囲。学校給食法 (第 11 条) が保護者負担としているのは食材費などに限られ、それ以外は設置者の負担だ。設置者である自治体が食材費の一部まで自前で持てば、保護者が払う給食費はその分だけ下がる。どこまで補助するかは自治体の判断なので、同じ献立でも保護者の支払額は変わる。

理由 2: 調理方式。各学校の中に調理場を持つ自校式と、1 か所で数千食をまとめて作るセンター式では、仕入れの規模がまるで違う。前の節で見たとおり量が増えるほど単価は下がるため、センター式のほうが食材費を抑えやすい。一方、自校式は作りたてを出せる、献立を学校ごとに変えられるという別の価値がある。

理由 3: 献立の方針。地元産の食材を優先する、米飯の回数を増やす、果物やデザートをどれくらい入れる。こうした方針の違いはそのまま食材費に跳ね返る。

つまり、給食費が高い自治体は損をしているわけではなく、安い自治体が手を抜いているわけでもない。金額の差は「誰がどこまで負担し、どう作っているか」の差だ。

食材費が上がったとき給食はどう変わるか

給食費は年度の初めに決めた金額を 1 年間払い続ける形が一般的だ。ところが食材の値段は年度の途中でも動く。予算が固定されたまま仕入れ値が上がると、栄養士は次の 3 つのどれかを選ぶことになる。

手 1: 献立を組み替える。値上がりした食材を、もやしや豆腐、卵といった価格の安定した食材に置き換える。ただし学校給食摂取基準は動かせないので、栄養価を落とさずに入れ替える組み合わせを探す必要がある。ここが栄養士の腕の見せどころだ。

手 2: 自治体が補助を広げる。設置者の負担範囲を広げて食材費の上昇分を吸収する方法だ。保護者の支払額は変わらないが、財源は税金なので自治体の予算次第になる。

手 3: 翌年度の給食費を上げる。最後の手段で、しかも年度の区切りまで待つのが普通だ。

使われる順番は原則としてこの並びになる。だから食材の値上がりは、まず献立の中身の変化として現れ、給食費の金額に届くのはかなり後になる。家庭の食費もこの順番がそのまま使える。予算を増やす前に、まず献立を組み替える余地がどれだけ残っているかを見るのだ。

夏休みに食費が増えるのはなぜか - 給食が止まる期間の家計

給食の効果が一番はっきり見えるのは、給食が止まる時期だ。学校がある日は昼食が 1 食 250〜300 円で済んでいたのに、長い休みに入るとその 1 食を家庭で用意することになる。

コンビニ弁当で済ませれば 500〜600 円、外食なら 800 円以上。中学生 1 人が 1 日 1 食を置き換えるだけでも、給食との差は 200〜500 円になる。これに休みの日数と家族の人数を掛けると、夏休みに食費が膨らむ感覚の正体が数字で見えてくる。

ここから導ける対策はシンプルだ。休み期間の食費は「昼食をどう用意するか」に集中させるのが一番効く。夕食を我慢するより、増えた 1 食を安く回す仕組みを作るほうが効果が大きい。そして、その仕組みは給食がすでに答えを出している。

給食から学ぶ「食費を安くする 3 つのコツ」

給食の仕組みには、家庭の食費を節約するヒントが詰まっている。

コツ 1: まとめ買いで単価を下げる。給食センターほどの量は無理でも、週末にまとめて食材を買い、下ごしらえして冷凍しておけば、1 食あたりのコストは確実に下がる。スーパーの特売日を狙うのも効果的だ。

コツ 2: 旬の食材を選ぶ。旬の野菜や果物は安くて栄養価が高い。夏のトマトやきゅうり、冬の白菜や大根は、旬を外れた時期の半額以下で買えることもある。

コツ 3: 「コスパ食材」を常備する。もやし、豆腐、卵、納豆、バナナ。これらは安くて栄養価が高い「コスパ最強食材」だ。給食の栄養士も頼りにしている食材を、家庭でも積極的に取り入れよう。

ちなみに、自炊の食費を 1 食 300 円以下に抑えられれば、コンビニの値引き商品を買うよりも安上がりになることが多い。給食の知恵を借りて、お小遣いの節約に役立ててみてほしい。

よくある質問

給食費には調理員さんの人件費も含まれているのでしょうか?

含まれていません。学校給食法 (第 11 条) は、調理施設や設備の費用と政令で定める運営経費を学校の設置者 (自治体など) の負担、それ以外を保護者の負担と定めています。保護者が給食費として払っているのは食材費などに限られ、給食にかかる費用の一部です。

給食費が自治体によって違うのはなぜでしょうか?

自治体が食材費をどこまで補助するか、調理をセンター式と自校式のどちらで行っているか、献立でどんな食材を優先するかが自治体ごとに違うためです。金額の差は給食の質の差とは限らず、負担の分け方と作り方の違いを反映しています。

食材が値上がりすると給食はすぐ値上げされるのでしょうか?

すぐには値上げされないのが一般的です。まず献立を組み替えて価格の安定した食材に置き換え、次に自治体の補助で吸収し、それでも足りないときに翌年度の給食費を見直すという順番になります。値上がりは金額よりも先に献立の変化として現れます。

家庭でも給食と同じくらい安く食事を作れるのでしょうか?

1 食あたりの食材費なら近づけられます。週末のまとめ買いで単価を下げ、旬の食材を選び、もやしや豆腐、卵のような価格が安定した食材を常備するという給食と同じ 3 つの手が使えます。自炊を 1 食 300 円以下に抑えられれば、外で買うより安く済むことが多くなります。

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