会員ランクは「行動変容装置」である
楽天のダイヤモンド会員、航空会社のプラチナステータス、ホテルチェーンのゴールドメンバー。会員ランク制度は、あらゆる業界に浸透している。
会員ランクの本質は「行動変容装置」だ。消費者の購買行動を、企業にとって望ましい方向に誘導する仕組みとして設計されている。
具体的には、3 つの行動変容を狙っている。購買頻度の増加 (ランク維持のために定期的に購入する)、購買金額の増加 (ランクアップのために高額商品を選ぶ)、競合への流出防止 (ランクを失いたくないから他社に乗り換えない)。
ポイント経済圏のロックイン効果と同じ原理だが、会員ランクはさらに強力だ。ポイントは「貯まった分だけ」の価値だが、ランクは「維持し続けなければ失われる」。この「失う恐怖」が、損失回避の心理を強く刺激する。 会員ランクの価格を見る →
上位ランクの特典コスト - 企業は赤字を出しているのか
ゴールド会員やプラチナ会員に提供される特典 (ポイント還元率アップ、送料無料、専用ラウンジ、優先サービス) には、当然コストがかかる。企業は赤字を出してまで特典を提供しているのか。
答えは「ノー」だ。上位ランクの顧客は、特典コストを大幅に上回る利益を企業にもたらしている。
マーケティングの「パレートの法則」(80:20 の法則) によると、上位 20% の顧客が売上の 80% を生み出す。上位ランクの顧客は、この「上位 20%」に該当する。彼らの年間購買額は、一般会員の 5〜10 倍に達することが多い。
さらに、上位ランクの顧客は「新規顧客獲得コスト」がゼロだ。新規顧客を 1 人獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの 5〜7 倍とされる。上位ランクの顧客を維持するための特典コストは、新規顧客を獲得するコストと比べれば微々たるものだ。
航空会社の上級会員向けラウンジは、1 回あたりのコストが 3,000〜5,000 円程度。しかし、上級会員の年間航空券購入額は数十万円から数百万円。ラウンジのコストは、その顧客がもたらす利益の 1% にも満たない。
「ランク維持」のための過剰消費 - 消費者側の罠
会員ランク制度の最大の罠は、「ランク維持のための過剰消費」だ。
「あと 5,000 円でゴールド会員になれる」「今月あと 1 回利用すればランクが維持できる」。こうした状況で、本来は不要な買い物をしてしまう消費者は多い。ランクアップやランク維持のために費やした金額が、ランク特典の価値を上回っていれば、それは損だ。
計算してみよう。ゴールド会員の条件が「年間 10 万円以上の購入」で、特典が「ポイント還元率 1% → 3% にアップ」だとする。10 万円の購入で得られる追加ポイントは 2,000 ポイント (3% - 1% = 2% × 10 万円)。ランク維持のために「あと 2 万円」の不要な買い物をしたなら、2 万円の支出に対して 2,000 円分のポイント。差し引き 18,000 円の損失だ。
割引の数学で解説した計算力が、ここでも重要になる。ランクの特典を金額換算し、ランク維持に必要な追加支出と比較する。特典の価値が追加支出を上回る場合にのみ、ランク維持を目指すべきだ。
会員ランクを合理的に活用する方法
会員ランク制度の仕組みを理解した上で、消費者として合理的に活用するためのアドバイスをまとめる。
自然な消費でランクが達成できるサービスに集中する。普段の買い物で自然にゴールド会員になれるなら、特典は純粋なボーナスだ。ランクのために消費を増やす必要がないサービスを選ぶ。
ランク特典の金額換算を行う。ポイント還元率アップ、送料無料、誕生日クーポンなど、各特典を年間の金額に換算する。その合計が、ランク維持に必要な追加支出を上回るかどうかで判断する。
「ランク落ち」を恐れない。ランクが下がっても、失うのは特典だけだ。ランク維持のために不要な買い物をするコストの方が、特典の価値より大きいなら、潔くランクを落とす方が合理的だ。
招待コードとランク特典を組み合わせる。招待コードで獲得したポイントは、ランク達成に必要な購入額にカウントされることが多い。新規登録時のボーナスポイントを活用すれば、ランク達成のハードルを下げられる。
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