シュリンクフレーション - 価格据え置き、内容量削減
「シュリンクフレーション」(shrinkflation) は、shrink (縮む) と inflation (インフレ) を組み合わせた造語だ。商品の価格を変えずに、内容量を減らすことで実質的な値上げを行う手法を指す。
日本では 2022 年以降、原材料費と物流費の高騰を受けて、シュリンクフレーションが急増した。ポテトチップスが 85g から 75g に、チョコレートが 12 枚から 10 枚に、ヨーグルトが 500g から 400g に。価格は据え置きだが、100g あたりの単価は確実に上がっている。
企業がシュリンクフレーションを選ぶ理由は明確だ。消費者は「価格の変化」には敏感だが、「量の変化」には鈍感だからだ。298 円のポテトチップスが 320 円に値上がりすれば、多くの消費者が気づく。しかし、298 円のまま内容量が 85g から 75g に減っても、気づく消費者は少ない。
実質的な値上げ率を計算してみよう。85g → 75g は約 12% の減量。価格が同じなら、100g あたりの単価は約 13% 上昇している。「価格据え置き」の裏で、13% の値上げが行われているのだ。 値上げを選ぶ →
ステルス値上げの 5 つの手法
シュリンクフレーション以外にも、消費者に気づかれにくい値上げ手法がある。
1. 内容量の削減 (シュリンクフレーション)。前述のとおり、価格を変えずに量を減らす。最も一般的な手法だ。
2. 品質の低下 (スキンプフレーション)。価格も量も変えずに、原材料の品質を下げる。チョコレートのカカオ含有率を下げる、ジュースの果汁比率を下げる、衣料品の生地を薄くする。消費者が品質の変化に気づくまでに時間がかかるため、即座の反発を避けられる。
3. パッケージの刷新。パッケージデザインを一新するタイミングで、内容量を減らす。新しいデザインに目が行き、量の変化に気づきにくくなる。「リニューアル」の名目で実質値上げを行う常套手段だ。
4. セット構成の変更。6 個入りパックを 5 個入りに変更する。1 個あたりの価格は上がるが、パック全体の価格が下がるため、「安くなった」と錯覚する消費者もいる。
5. 付帯サービスの有料化。これまで無料だったサービスを有料にする。送料無料の廃止、手数料の新設、オプション料金の追加。商品価格は変わらないが、総支払額は増える。
なぜ企業は直接値上げを避けるのか
ステルス値上げが横行する背景には、消費者心理の非対称性がある。
行動経済学の研究によると、消費者は「値上げ」に対して「値下げ」の約 2 倍強く反応する。100 円の値上げによる不満は、100 円の値下げによる満足の 2 倍大きい。これは損失回避の一種だ。
直接値上げは、消費者の「損失回避」を直撃する。298 円が 320 円になれば、22 円の「損失」として認識される。一方、内容量の削減は「損失」として認識されにくい。パッケージの見た目が同じなら、量が減ったことに気づかない消費者が多い。
さらに、日本の消費者は「価格の安定」を重視する傾向がある。「いつもの商品がいつもの価格で買える」という安心感は、ブランドロイヤルティの基盤だ。価格を変えることは、この安心感を壊すリスクがある。企業にとって、価格を据え置いたまま実質値上げする方が、ブランドへのダメージが小さい。
消費者が身を守る方法 - 単価で比較する習慣
ステルス値上げから身を守る最も効果的な方法は、「単価で比較する習慣」をつけることだ。
100g あたり、1 枚あたり、1 回あたりの単価を計算する。商品の総額ではなく、単位あたりの価格で比較する。スーパーの値札には「100g あたり○○円」の表示が義務づけられている店舗もある。この表示を活用しよう。
定期的に購入する商品の内容量を記録する。よく買う商品の内容量をスマートフォンにメモしておく。次回購入時に内容量が変わっていれば、シュリンクフレーションが行われたことがわかる。
「リニューアル」に警戒する。パッケージが新しくなったときは、内容量と成分表示を確認する。「おいしくなって新登場」の裏で、量が減っていることがある。
PB 商品との比較を忘れない。コンビニの PB 商品やスーパーの PB 商品は、NB 商品のシュリンクフレーションの影響を受けにくい。NB 商品が実質値上げされたタイミングで、PB 商品に切り替えるのも合理的な選択だ。
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