制服はなぜ高い - 1 着 3 万円の学生服の原価と流通の仕組み

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制服 1 着 3 万円の内訳

中学校の制服一式 (上着 + ズボンまたはスカート) の相場は 3〜5 万円。ワイシャツ、靴、鞄まで含めると 7〜10 万円になることもある。ユニクロのジャケットが 5,000 円で買える時代に、なぜ制服はこれほど高いのか。

生地代: 約 3,000〜5,000 円。制服に使われるウール混紡の生地は、ファストファッションのポリエステル生地より高品質だ。3 年間毎日着ても型崩れしにくい耐久性が求められるため、生地のグレードが高い。

縫製費: 約 5,000〜8,000 円。制服は体型に合わせたサイズ展開が細かく、ファストファッションのように S/M/L の 3 サイズでは済まない。少量多品種の生産になるため、1 着あたりの縫製コストが上がる。

販売店の取り分: 約 10,000〜15,000 円。ここが制服の価格を押し上げている最大の要因だ。制服は学校指定の販売店でしか買えないことが多く、価格競争が起きにくい。販売店は採寸、お直し、アフターサービスも行うため、その人件費も価格に含まれている。

制服 1 着 3 万円の内訳 (上着 + ズボンまたはスカート)
生地代3,000〜5,000 円もっとも小さい 縫製費5,000〜8,000 円少量多品種で上がる 販売店の取り分10,000〜15,000 円価格を押し上げる最大の要因

棒の長さは金額の目安を並べたもの。3 万円のうち残りは流通経費や消費税などに分かれる。金額は中学校の標準的な制服の相場から見た内訳の目安。

並べてみると、いちばん高いのは生地でも縫製でもなく、売る側の取り分だという構図が見えてくる。制服が高いのは「良い生地を使っているから」だけでは説明がつかない。値段の大きな部分は、どこで買えるかが決まっているという売り方そのものから来ている。

負担が重く感じるのは金額が 1 か月に集中するから

制服一式が 3〜5 万円、ワイシャツや靴、鞄まで含めれば 7〜10 万円。この金額が家計に重くのしかかるのは、総額の大きさだけが理由ではない。支払いが入学前のひと月ほどに集中するからだ。

採寸は入学の数か月前に行われ、納品と支払いは入学式に間に合う時期に来る。同じ時期に体操着や上履き、教科書以外の教材費も重なる。1 年に分けて払えば月あたり数千円でも、ひと月にまとめて来れば印象はまったく違う。

だからこそ、金額を下げる工夫よりも先に「いつ、いくら必要になるか」を把握しておくほうが効く。学校説明会で配られる購入品リストには、制服以外の必要品と金額の目安が載っていることが多い。この段階で総額を並べておけば、後の節で触れる早期注文やリユースを検討する時間も確保できる。

「学校指定」が価格競争を消す仕組み

制服が高い根本的な理由は「学校指定」という仕組みにある。学校が特定のメーカーと販売店を指定するため、保護者は他の店で安く買うという選択肢がない。これは経済学で「独占」と呼ばれる状態だ。

同じ商品でも店によって値段が違うのは、複数の店が競争しているからだ。しかし制服は競争相手がいないため、価格が下がる圧力が働かない。

近年は制服の価格高騰が社会問題になり、公正取引委員会が調査に乗り出すケースも出てきた。一部の自治体では、制服のリユース (再利用) 事業を始めたり、学校指定を緩和して複数の販売店から選べるようにする動きもある。

制服メーカーも大手 3〜4 社が市場の大部分を占める寡占状態だ。メーカー間の競争が限定的なことも、価格が高止まりする一因になっている。

もっとも、学校が指定する理由がないわけではない。同じ品質とサイズ展開をどの生徒にも保証でき、卒業まで同じ型を買い足せることが指定の根拠として説明されることが多い。指定をなくせば解決という話ではなく、競争のなさと品質の保証がひとつの仕組みに同居しているのが実情だ。

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指定が緩んでも値段がすぐには下がらない理由

学校指定が緩和されて複数の販売店から選べるようになれば、価格はすぐ下がるのか。実際にはそう単純ではない。値下がりの余地があるのは内訳のうち販売店の取り分の部分だけで、生地代と縫製費は競争が増えても変わらないからだ。

縫製費が高いのは、1 校あたり数百着という少量多品種の生産だからだ。販売店が増えても 1 校の生徒数は変わらないので、この構造には手が付かない。メーカー側が大手 3〜4 社の寡占であることも、生地や縫製の単価が下がりにくい理由になる。

その点で、リユースが価格に効く理由は別のところにある。すでに作られた制服を回すので、生地代と縫製費をもう一度払わずに済む。値段の内訳のうち大きい部分を丸ごと飛ばせるから、定価の 30〜50% という水準が成立する。競争で数パーセントを削るのとは、効き方の桁が違う。

ファストファッションと制服の決定的な違い

「ユニクロで似たようなジャケットが 5,000 円なのに」と思うかもしれないが、制服とファストファッションにはいくつかの決定的な違いがある。

耐久性。制服は 3 年間、週 5 日着ることを前提に設計されている。年間約 200 日、3 年で 600 回の着用に耐える必要がある。ファストファッションは 1 シーズン (約 3 か月) の着用を想定しているため、同じ頻度で着れば半年で傷む。

生産量。ファストファッションは 1 デザインを数万〜数十万着生産する。制服は 1 校あたり数百着。生産量が少ないほど 1 着あたりのコストは上がる。

アフターサービス。制服販売店は、成長に合わせた裾上げや袖出し、ボタンの付け替えなどを無料または低価格で行う。この「3 年間のサポート」が価格に含まれている。

1 着 3 万円を 3 年 (600 回) 着ると、1 回あたり 50 円。ファストファッションの 5,000 円を 50 回着ると 1 回あたり 100 円。長期で見れば制服のほうがコスパが良い場合もある。

1 回着るごとのコスト
制服 3 万円50 円3 年 600 回着た場合 ファストファッション 5,000 円100 円50 回着た場合

棒の長さは 1 回あたりの金額。着る回数が増えるほど 1 回あたりは下がるので、途中で買い替えるとこの計算は成り立たなくなる。

この比べ方には条件が付く。制服の 50 円は 3 年間着られた場合の数字で、途中で買い替えれば割る回数が減って 1 回あたりは上がる。逆にファストファッションも、傷まない着方をして回数を伸ばせば 1 回あたりは下がる。値段だけでなく「何回着るか」が金額を決めていると考えるほうが実態に近い。

制服を安く手に入れる方法

方法 1: リユース制服を探す。卒業生から譲り受ける、学校や PTA が運営するリユースショップを利用する、メルカリで中古品を探す。状態の良い中古制服が定価の 30〜50% で手に入ることがある。

方法 2: 入学前のセール時期を狙う。制服販売店は 11〜1 月に早期注文割引を実施することがある。早めに採寸・注文すると 5〜10% 安くなるケースがある。

方法 3: 成長を見越したサイズ選び。中学 3 年間で身長が 10〜15cm 伸びることも珍しくない。最初から少し大きめのサイズを選び、裾上げで調整すれば、途中で買い替える必要がなくなる。買い替え 1 回分 (3 万円) の節約効果は大きい。

方法 4: どこまで直せるかを採寸のときに確認する。裾上げや袖出しの範囲、サイズ交換に応じてもらえる期間は販売店によって違う。大きめを選ぶ作戦が成り立つかどうかはここで決まるので、採寸の場で聞いておく。無料または低価格のアフターサービスは価格に含まれているので、使わないままにするほど割高になる。

3 年間の総額として見積もっておく

1 回あたり 50 円という計算は、3 年間 600 回を着たあとに振り返って成り立つ数字だ。途中で買い替えれば、割る回数が減って 1 回あたりは上がる。制服代を考えるときは、入学時の出費ではなく 3 年間の総額として見ておくほうが実態に合う。

総額を左右する最大の分かれ目は、買い替えが発生するかどうかだ。中学 3 年間で身長が 10〜15cm 伸びることも珍しくないので、裾上げと袖出しで足りるサイズを最初に選べたかどうかで、買い替え 1 回分の 3 万円が乗るかどうかが決まる。採寸のときに販売店へ「どこまで直せるか」を確認しておく価値はここにある。

安くする手段は効き方が違うので、組み合わせて考えるとよい。早期注文割引の 5〜10% は本体価格に効くが、在庫や時期に左右されにくい。リユースの定価の 30〜50% は効き方が大きい代わりに、必要なサイズが出てくるかどうかに左右される。3 年間の総額を先に置いてから、どちらをどの場面で使うかを決める順番になる。

よくある質問

制服 1 着 3 万円の内訳はどうなっているのですか?

生地代が約 3,000〜5,000 円、縫製費が約 5,000〜8,000 円、販売店の取り分が約 10,000〜15,000 円です。もっとも大きいのは販売店の取り分で、採寸やお直し、3 年間のアフターサービスの人件費もここに含まれています。生地代は意外に小さく、価格の主因ではありません。

なぜ制服は学校指定の店でしか買えないのですか?

学校が特定のメーカーと販売店を指定する仕組みになっているためです。他の店で安く買う選択肢がないため価格競争が起きにくく、経済学でいう独占に近い状態になります。制服メーカー自体も大手 3〜4 社の寡占で、メーカー間の競争も限定的です。

指定販売店が増えれば制服は安くなりますか?

下がる余地があるのは内訳のうち販売店の取り分の部分だけです。縫製費が高いのは 1 校あたり数百着という少量多品種の生産によるもので、販売店が増えても変わりません。生地代と縫製費を払い直さずに済むリユースのほうが、価格への効き方は大きくなります。

制服とファストファッション、結局どちらが割安ですか?

着る回数で変わります。3 万円の制服を 3 年 600 回着れば 1 回あたり 50 円、5,000 円のジャケットを 50 回着れば 1 回あたり 100 円です。ただし途中で買い替えると割る回数が減るため、サイズ選びと裾上げで 3 年もたせられるかどうかが分かれ目になります。

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